こんにちは。今回はひき逃げ事故の慰謝料で1000万円貰った話をしたいと思います。
僕は学生時代バイクで通学中にひき逃げされ大怪我をし、弁護士を立てて示談交渉をした結果後遺障害12級と認定され多額の慰謝料を受け取りました。
この経験から様々な知見を得て、僕は弁護士費用特約推進派となりました。
事故に遭わなければ無駄金ですが、弁護士費用特約は一般的に年額2,000円前後と安価なので期待値的には考慮に値すると思います。その参考にしてもらうべく僕の事例を紹介します。
こんな経験はしないのが一番ですが、もし起こった時にどうなるのか知っておきましょう。
・弁護士費用特約の概要、メリット・デメリット
・事故の後に取るべき行動
・弁護士への依頼方法
・後遺障害12級の慰謝料相場
非常に力を入れて書いた長編です。お急ぎの方は読み飛ばしつつ見てくださいね。
それではさっそくいきましょう。
裏メンって何?って方はこの記事をご覧ください↓
弁護士費用特約とは
弁護士費用特約とは、自動車保険(任意保険)の特約です。任意保険と一緒に加入しておけば、弁護士に相談・依頼をする際の費用を保険会社が負担してくれます。
入るも入らないも加入者の自由で、メリット・デメリットはこんな感じ。
・着手金や報酬金を保険会社が負担してくれるため、費用倒れの心配がない(上限300万円)
・ほとんどの場合慰謝料が増額される
・後遺障害認定を受けやすくなり、慰謝料等が爆発的に増加する可能性がある
・示談交渉の手間が省ける
・無保険車と事故を起こした場合もプロに法的措置任せられる
・物損事故でも利用できる
・特約料として年額2,000円前後かかる
・事故後に契約しても使えない
・利用するのに保険会社の事前承認が必要
・弁護士は自分で見つけなくてはいけない
ただし、交通事故に強い法律事務所は検索すればすぐに出てくるのでそこまで気負うこともないと思います。
事故発生 一時停止無視車によるひき逃げ
2015年9月、工学系の大学の修士2年だった僕は修士論文用の実験をするため、土曜日にも関わらず愛馬のZZR250にまたがって学校に向かっていました。
事故の前に撮った写真
途中オイル交換をしたため、心なしかいつもより軽快にアクセルを回していた気がします。学校へのショートカットのため細道に入り気持ちよく加速していたその時、交差点の影から一時停止無視の車が飛び出してきました。
普段そこから出てくる車を見たことが無かったので完全に油断していました。
ブレーキを踏んだ直後、バイクがスリップを起こして甲高い音が真下から聞こえます。当然制御を失い僕はアスファルトに投げ出されました。
ここから視界と方向感覚が完全にゼロになります。道路を転がりながら
(受け身とらなきゃ)
(頭部の安心感すごいな、フルフェイスのヘルメットかぶってて良かった)
などと変に冷静に思考していたのを覚えています。しかし受け身を取ろうにも転がる遠心力が強すぎて肘や膝を曲げられません。
結局自然に停止するまでなすすべもなくアスファルトに打ち付けられ、傷ついていく身体をただ知覚することしかできませんでした。
ようやく停止して顔をあげると、交差点から走り去る車の後ろ姿が。
逃げられる!!と思いとっさに交差点まで走りましたが、もうナンバープレートを確認できる距離ではありませんでした。
この時左の鎖骨と肩甲骨が折れ、肋骨にひびが入っていました。アドレナリンで痛みが麻痺してたんでしょう。
事故直後、近所の主婦の方が駆けつけて救急車を呼び介抱してくれました。天使。
この時左腕がまったく動かせませんでしたが、両手両足の指が動くことを確認し神経が無事なことに安心しました。
治療 鎖骨へボルト・プレートを埋め込む
病院に搬送されてCTを撮り、即入院となりました。左鎖骨と左肩甲骨の骨折です。
CT写真
1週間後にボルトとプレートで鎖骨を固定する手術をすることに決定しました。
ここからがキツかったです。身体を少しでも動かすと肩に激痛が走って満足に動けないうえ、全身のいたるところを激しくすりむいており、ただただ痛みに耐える1週間でした。
ひき逃げ事件であるため、警察が病室にきて事情を聞かれたりもしました。
さらに、実はこの時親に内緒で彼女と同棲しており、病室で母親と彼女が初めて顔を合わせるという二次被害が発生し肩以上に胃が痛くなったのですが、その話は割愛します…
手術は無事終わり、驚くほど痛みが軽くなりました。固定されるとこんなに楽になるのかと思いましたね。その代わり手術の縫い目は結構痛かったです。
レントゲン(上:手術前、下:手術後)
術後の経過を見て、最終的に事故発生から1ヶ月弱で退院となりました。
犯人逮捕
重症者の出たひき逃げ事件の検挙率は84%
犯人の見つからないひき逃げ事故は最低限の公的保証しか受けられません。
犯人が分からないことには「慰謝料」を請求する相手がいないということです。ひとまず怪我が快方に向かった当時、犯人逮捕は最大の願いでした。
調べたところ重傷者の出たひき逃げ事件の検挙率は84%程度。その数字を信じ祈っていると、警察から吉報が。
事件から1ヶ月半で犯人は逮捕されました。
犯人は事故現場の近くに住む実家暮らしの30代派遣社員の男でした。
逮捕のカギは現麻雀系YouTuber
犯人逮捕の流れはこんな感じ
事故当日、犯人の両親が仕事に行った息子の帰りが遅いことを心配する
→数日後息子の職場に問い合わせると、無断欠勤が続いていることが分かる
→犯人両親が捜索願を出そうかと迷う
→郵便受けに事故の目撃情報を求めるビラを発見
→車の特徴や事故の日時から、ウチの息子が犯人ではないかと考え警察に相談
→息子職場近くにベコベコになった車を発見
→息子=犯人ほぼ確定
→豊橋駅から電車に乗り込む犯人を監視カメラで確認
→浜松駅で下車する犯人を監視カメラで確認
→浜松市内のネットカフェや漫喫に指名手配
→来店した犯人を御用
という流れだったそうです。かなり大変で地道な捜査をしてくれたことが伺え、担当してくれた警察官の方には本当に感謝しています。
ちなみにこのビラを作ってポスティングしてくれたのが、大学の先輩である現麻雀系YouTuberの肥Dさんです。マジで恩人です。本人は犯人を見つけるゲーム感覚で楽しんでましたがw
恩人のチャンネル(麻雀カッコイイシリーズ)
刑事裁判
交通事故の加害者は3つの罰、刑事罰・民事罰・行政罰を受けます。
ざっくり言うとこんな感じです。
逮捕をきっかけに検察は刑事裁判に向けて動き出しました。
国選弁護人とのやりとり
犯人の弁護士(国選弁護人)から何度か連絡がありました。印象的だったのが謝罪金をめぐるやりとりです。
犯人から慰謝料とは別に謝罪として10万円払うと言っています。しかしこれを受け取ると犯人は反省していて被害者もそれを認めた形になるので、裁判で犯人に有利に働き量刑は軽くなります。それを踏まえて受け取りますか?
当時の僕は学生。目先の10万円に心が揺れなかったと言えば嘘になります。しかし10万円ぽっちで犯人の刑を軽くすることは感情が許しませんでした。
本当に反省しているなら判決の後に支払ってください
そう言って電話を切りました。
後日この10万円を犯人がバックレてすったもんだがありましたが、長くなるので割愛しますw
刑事裁判(1回目)初めて犯人と対面
人生で初めて法廷に入り、傍聴席に座ります。被告人入廷となり、初めて犯人の顔を拝みました。
上下グレーのスウェットに身を包み、だらしない体型に品のない茶髪。いかにも学の無い粗暴な人間性が見て取れます。
深夜のドン・キホーテにいそうと言ったら失礼でしょうか。でも伝わりやすい表現ですよね。
僕はこういう人間に対して人一倍嫌悪感を抱くタイプで、瞬間的に怒りが込み上げました。しかし、手錠や腰縄をつけられた惨めな姿がかろうじで僕の神経をなだめます。
憎い相手の惨めな姿を嘲笑って心の平静を保ったのです。僕もできた人間じゃありませんw
一度目の裁判は事実確認や被告人尋問が行われました。
事故の状況が検察から語られ、逃亡中の心境などが犯人の口から語られました。
国選弁護人からは
・初犯である
・受け取ってもらえなかったが、謝罪金として10万円払う意思はあった
・被告人は今後もう車を運転するつもりはない
・任意保険に入っており、被害者には慰謝料が支払われる予定である
・犯人の両親が今後も一緒に生活し責任をもって再教育すると言っている
などの弁護がありました。
(保険入ってるなら逃げるなよ…)
(まぁどうせ親に丸投げして把握してなかったんやろなぁ…)
1回目の裁判はそんな感じで終わり、数週間後に第2回の裁判が行われました。
刑事裁判(2回目)判決は懲役1年2か月、執行猶予3年
第2回は判決を言い渡すだけで終わるそうです。
裁判官や検察、弁護士にとっては慣れた作業なんでしょう。規定演技のように進行し、裁判長から懲役1年2か月、執行猶予3年の判決が言い渡されました。
執行猶予3年ということは3年間犯罪を起こさなければおとがめなしということ。
瞬く間に閉廷となり、犯人と国選弁護人は早足で傍聴席を横切り、腕を三角巾でつるした僕に目もくれず法廷から去っていきました。
この時は怒りと悔しさで気が狂いそうになりました…
慰謝料請求
交通事故専門の弁護士へ依頼
残るは犯人(の加入している自動車保険会社)への慰謝料請求です。
といっても、普通はお互いの保険会社同士に任せます。 …が!
実は僕の入院中、両親が交通事故専門の法律事務所が開催する無料相談会に出向いてくれていました。これが超絶ファインプレーとなります。
結果的にその法律事務所に依頼し、慰謝料の最大化に向けて動き出しました。
この時決め手となったのは自動車保険の弁護士費用特約に入っていたことです。
弁護士報酬は、着手金+成功報酬(交渉により増額した分の数十%)となることが多いのですが、この特約で300万円までは保険会社から支払われます。
今回の事故だと間違いなくその範囲で収まりそうでした。
初めて知った慰謝料の3つの基準
普通に生きてるとなかなか知る機会が無いですが、慰謝料には3つの基準があります。
・任意保険基準
・弁護士基準
下に行くほど高く、保険加入状況や弁護士を立てるか否かでどの基準になるかが変わります。
物品・携行品賠償は審査ゆるゆる?
事故により破損したバイクや携行品の損害賠償を請求できます。
結論から言うと、以下のように認められました。
バイク・携行品賠償
バイク:235,000円
携行品:300,000円
バイク処分代:12,000円
計:547,000円
過失相殺:×85%
保険金額:464,950円
この時、携行品のリストアップや損害状況の写真撮影は被害者がやらなくてはいけません。
さらに買った時の値段も書く必要があるのですが、現実問題記憶頼りの部分はあります。
躍起になってありとあらゆるものを書き出して、携行品として請求したのは50万円ほどだったでしょうか(記憶があいまい)。結果、認められたのは30万円でした。
正直かなり図々しく書いたし、買ったものは減価していくので、事実確認もなくあっさり30万円分も認められたのは驚きました。でも嘘はダメですよ!
なお、過失割合は弁護士の交渉により20:80から15:85となりました!
もろもろの手続きで弁護士が間に入ってくれるので、相手の保険会社にいいように丸め込まれないという精神的安心感がありましたね。
慰謝料の最大化のキモは後遺障害認定
慰謝料最大化のキモは後遺障害認定です。
後遺障害は1級から14級まであり、1級が一番重いです。
後遺障害認定をとると等級に応じて慰謝料が大きくなり、加えて逸失利益(後遺障害が無ければ得られていた経済的利益)も算入されます。
とはいえ後遺障害認定は治療が終わってからの話なので、当面は治療に専念します。
治療中に意識していたのは通院回数ですね。自動車保険とは別に入っていた医療保険で通院回数×6,000円が支給されたので、バイト感覚でリハビリに通っていましたw
後遺障害認定をめぐる攻防
事故から2年、僕は無事大学院を修了し大手メーカーに勤務していました。
勤務地近くの病院へ紹介状を書いてもらっていたので、そこで定期的にレントゲンを撮っており、もう大丈夫だろうということでついに鎖骨に埋めたプレートを抜く時がきました。
難しい手術でもないのであっさりと終わり、術後の経過を見るため何度か通院します。
そして最後の通院日、僕は病院の待合室で弁護士が派遣した行政書士とともに作戦を練っていました。
今回の狙いは後遺障害12級5号の“鎖骨に著しい変形を残すもの”です。著しいの解釈が人によって分かれるので、医者の裁量に依存してしまいます
分かりました。鏡で見る限り明らかに左右対称じゃないので、そこをアピールします
この病院は私を診察室に入れてくれないみたいなので本人の熱意にかかっています
(慰謝料のために)頑張ります!!
~診察室~
綺麗に治ったし経過も安定しています。これで最後でいいでしょう
お世話になりました。でも綺麗に治ったと言えるでしょうか…。ほら、左右で鎖骨の形が違うじゃないですか
カルテに使った写真。この写真だと対称に見えますね…。実際は非対称です。
いやいや十分綺麗ですよ
いやでも一目で変だって分かりますよ!僕ダイビングするから見られる機会多いし嫌なんです!
それは関係ないんだけど…
後遺障害認定されるだけで慰謝料が数百万円違うんです!ひき逃げされて苦しい思いしたんです!良心でお願いします!
…ハァ、わかりました。12級になるよう書いておきます
ありがとうございます!!(ッシャオラァ!!!)
こんな感じでギリギリ後遺障害12級を勝ち取りました。
実際の診断書
診断書を見ると、最初に「明らかな変形はない」と書かれていますが、粘って書き換えてもらった形跡が分かると思います。
学校の保険からも保険金がめちゃくちゃおりた
このほかにも、大学入学時に学生全員が強制加入していた保険からも保険金がおりました。
その名も学生教育研究災害傷害保険(略称「学研災」)。
実験や研究、通学等で怪我をした時のための保険です。
強制加入というと聞こえが悪いですが、4年間の保険料が1,500円以下という安価なものだったので特に抵抗なく加入していました。本当に学生のためを思って運用されている保険だと思います。
ぶっちゃけ入ったことすら忘れてた保険でしたが、後遺症認定を受けたことによりここから累計1,698,000円も受け取れました。
万馬券か!!
慰謝料累計金額
今回の事故で受け取った慰謝料や保険金を支払い機関ごとにまとめました。
合計:10,109,482円
①相手の保険会社:7,317,482円
(内訳)
治療費:761,101円
通院費:68,807円
諸雑費:33,000円
文書料:11,800円
休業損害:164,931円
慰謝料:4,967,930円
逸失利益:1,589,207円
その他:533,760円
過失相殺:-813,054円
②学研災:1,698,000円
(内訳)
入通院分:198,000円
後遺障害分:1,500,000円
③医療保険:1,094,000円
(内訳)
入院・手術:620,000円
通院:474,000円
赤字で書いた部分が弁護士に頼んだことにより増額した部分です。依頼しなければ後遺障害14級すら怪しかったでしょう。説明会に足を運んでくれた両親に感謝です。
また、治療費や通院費などは実際に医療機関に支払っている部分ですので実際の手残りは額面ほど高くありません。さらにいうと治療費や通院費は弁護士費用特約に入っていなくても補償される部分です。
つまり、手残りとなった部分の大半は弁護士費用特約によって得られたことになります。このメリットを年額2,000円程度払うだけで受けられるので、僕は弁護士費用特約推進派です。
もちろん事故に遭わなければ無駄金です。しかし期待値的には考慮に値すると思うので、参考にしてもらうべく僕の事例を紹介しました。
また、任意保険は必ず入りましょうね。加害者になった場合、無保険だとこの慰謝料を個人で払うことになります。
↓これが弁護士事務所から送られてきた実際の内訳書です。
内訳書
”その他”の部分は携行品賠償+家族の駆けつけ代ですね。
休業損害のところ、しっかり”麻雀店勤務時の休業損害”って書かれてるのが面白いw
時系列まとめ、教訓
事故発生から慰謝料受け取りまでの時系列
今回の事故を時系列にするとこんな感じです。
2015年9月 事故発生、治療開始、手術(ボルト・プレートを入れる)
2015年10月 退院、犯人逮捕
2015年11月 弁護士へ依頼、物品・携行品賠償請求
2015年12月 刑事裁判
2017年11月 抜釘手術(ボルト・プレートを抜く、症状固定、後遺障害認定
2018年12月 金額確定
2019年1月 着金
後遺障害認定がされてから弁護士と保険会社でバチバチやっていたようで、金額確定までに1年かかりました。
教訓
・期待値的に合うと思うなら弁護士費用特約に入っておく
・事故に遭った場合、交通事故に強い弁護士に相談する
・後遺障害認定時は本気出す
交通事故に強い弁護士事務所は検索すれば出てきます。対面で相談したいのなら住んでる地域で探すといいでしょう。弁護士事務所を決めたら保険会社に連絡しましょう。
参考までに、僕が依頼したのは中村・橋本法律事務所です。非常に丁寧かつスピーディーにやっていただいたので満足しています。
一応言っておきますが、この紹介に際して何の報酬ももらってません
浪費せずに運用した
多額の慰謝料を獲得できたことは幸運でしたが、こうして得た元手を浪費せずに運用したのは賢明でした。
債権を中心に年利1.5%ほどで運用しているので、毎年1回不労所得で旅行に行けてます。
最近になって株の勉強をした結果、あの時債権じゃなくて株式インデックスファンドを買っておけばよかったと後悔しましたけどね(笑)
が、現金で持つという選択をしなかっただけで及第点じゃないかなあとも思います。
今は資産の70%を株式にすることを目指して、定期的に米国や全世界株式を買っています。
以上、長らく読んでいただきありがとうございました。
ラストでーす